ガスがたまる、お腹が張って苦しい、お腹がポコポコと鳴る、お腹の中でガスが破裂する、オナラがでる、さらには知らないうちにガス漏れしてたりする。
過敏性腸症候群で、こんな辛い症状に悩んでいる人が多いです。
これは、過敏性腸症候群の中でも「ガス型」と言われるものです。
回りに音で気付かれないか、臭いと思われていないかが心配で、学校に行けない・会社で働けないというほど深刻に悩んでいる人が多い病気です。
過敏性腸症候群には、下痢型・便秘型・ガス型があるのですが、ここでは特に「ガス型」に効く漢方薬を紹介していきたいと思います。
過敏性腸症候群に効く漢方薬が載っているサイトはあっても、なかなか「ガス型」に効く漢方薬が載っているサイトが無いので探している人が多いかと思いましたので、いくつかの文献(下記参照)や機能性消化管疾患診療ガイドラインなどを引用しつつご紹介します。
ただ、ネット上に実際に飲んでみたレビューやクチコミがほとんどなく、実際に効くのかは試してもらうしかなさそうです。
…でも、このあと紹介する3つの漢方薬が、5つの文献で共通して「ガス型に有効」と紹介されていたので試してみる価値はあると思います。
ここでは、複数の文献で共通して紹介されていたガス型に効く3つの漢方薬と、その効果を紹介します。
[参考文献:木下繁太郎(2015)『漢方薬の選び方使い方』つちや書店、新見正則(2010)『西洋医がすすめる漢方』新潮選書、嶋田豊(2016)『漢方薬事典』主婦と生活社、山本雅一(2013)『消化器疾患』成美堂出版、主婦の友社(2010)『家庭の医学』主婦の友社]
目次
そもそも漢方薬とは?
普段病院で処方される西洋薬は、人工的に合成された「化学物質」です。
一方で、漢方薬は植物の根や実や種子を乾燥させた「生薬」を組み合わせて作られます。
↓漢方薬はこのようにいくつかの「生薬」を組み合わせて作られています。
4000年という長い年月をかけて、効果は最大限に出るように、毒性や副作用は最小限に抑えるような絶妙な割合で生薬が配合されています。
過敏性腸症候群ガス型に漢方は効く?
過敏性腸症候群ガス型とは?
過敏性腸症候群は、病気と言っても、腸に炎症や潰瘍などの異常があるわけではありません。検査しても異常は何も無いのに、下痢や便秘、腹痛、ガスの症状が毎日起こります。
過敏性腸症候群の「ガス型」は、ガスの症状が特に強い人のことで、お腹にガスがたまって苦しかったり、おならが普通より頻繁に出てしまいます。(医学用語では、これを腹部膨満感と表現します。)
その原因は、食事や季節の変化などもありますが、主にストレスによる自律神経のバランスの乱れと考えられています。
どういうことか見ていきましょう。
まず、自律神経とは・・・、
- 日中に活発になる緊張・興奮の「交感神経」
- 夜に活発になるリラックスの「副交感神経」
の2つがあり、昼は交感神経、夜は副交感神経といったように交代でバランスを取っています。
しかし、ストレスによって脳への過度の緊張信号が続くと、脳の視床下部の働きに狂いが生じて自律神経が正常に働かなくなります。
本来、腸は副交感神経によって活発に働きます。つまり、腸は夜に活発に働くのが正解です。
しかし、自律神経が正常に働かなくなると、本来は交感神経が活発に働く仕事中や学校の時間に、副交感神経が優位になってしまいます。
副交感神経が優位になると日中でも腸が活動してガスを発生したり、強い便意が起きたり下痢をしてしまいます。
過敏性腸症候群ガス型への漢方の効果
このあと紹介する漢方薬には…、
- 腸の過剰な運動をやわらげる
- 体を温めて緊張をほぐす
- 胃腸を温めることで血流を良くする
- 緊張をほぐして痛みを緩和する
- 滋養強壮作用
- 便秘を改善する
- 下痢を改善する
- 体の機能低下と低体温を回復させる
などの複合的な効果があり、過敏性腸症候群のガス型に効きます。
過敏性腸症候群は漢方の得意分野!
漢方にも得意分野と不得意な分野があります。
たとえば、このようなものは不得意です↓
・手術が必要なもの
・抗生物質が必要な病気
・緊急性が高い病気
それに対して漢方が最も得意なのは、「検査ではとくに異常がないけど、なんとなく調子が悪い」という症状です。
つまり、検査しても腸に炎症などの異常は何も無いのに、ガスや下痢や便秘の症状が出てしまう過敏性腸症候群は漢方の得意分野ということになります。
参考にした文献の中にも、「消化器系で漢方薬がよい適応となるのは、慢性胃炎・食欲不振・神経性胃炎・常習便秘・過敏性腸症候群・イレウスの予防などです。」と書かれていました。
また、病院でも過敏性腸症候群の人に漢方が処方されることが多いので、ある程度効果は期待していいのではないかと思います。
また、機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群-にも、「過敏性腸症候群の漢方薬治療についての論文の質が低く、長期に渡る試験ではないため強い推奨はできないが、漢方薬の有効性を示す論文もあるので、今後レベルの高い試験が望まれる」といったような記載があるので、ある程度の効果はありそうですね。
効果が出るまでの期間
漢方での過敏性腸症候群の改善にかかる時間についてはまだ十分なデータが揃っていないのか、言及している文献がありませんでした。
ただ、以下の内容が参考になるかもしれません。
風邪や痛みなどに使われる「取り除く働き」をする漢方薬は、即効性があり、早いものでは10分程度で効果が出ます。
(例: 芍薬甘草湯という漢方薬は、月経痛やこむらがえりなどに10分程度で効く)
一方、体質改善に使われる「補う働き」をする漢方薬は、ゆっくり効果が現れます。たとえば体質からくるニキビ治療などは2~4週間の漢方服用でなんらかの効果がでます。
これを見ると、過敏性腸症候群も数ヶ月も飲まなくても2~4週間くらいで効果が実感できるかもしれませんね。反対に、1ヶ月飲んでも効果がなにもない場合は他の漢方を試したり他の方法に変えたほうがいいかもしれません。
過敏性腸症候群ガス型に効く漢方3選
それでは、ガス型の人に効く漢方薬を紹介します。
過敏性腸症候群全般に効く漢方薬
まず、ガス型に限らず下痢型や便秘型の人も含む過敏性腸症候群全般に効く漢方薬は以下の13個です。
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
- 人参湯(にんじんとう)
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
- 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
- 真武湯(しんぶとう)
- 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 四逆散(しぎゃくさん)
- 香蘇散(こうそさん)
- 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
代表的なのは「桂枝加芍薬湯」です。うつや不安が強い人には「半夏厚朴湯」や「香蘇散」を使うこともあります。
その中でもガス型に効く漢方薬
過敏性腸症候群に効く漢方薬は13個もありましたが、その中でもガス型(腹部膨満感)に効くのはこの3個です。複数の文献で共通して腹部膨満感に有効と紹介されていました。
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
- 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
おおまかに言えば、「桂枝加芍薬湯」は過敏性腸症候群の代表的な漢方薬で、ガスにも下痢にも便秘にも腹痛にも使えます。そして、腹痛とガスに使うのが「大建中湯」で、ガスと便秘には「桂枝加芍薬大黄湯」を選びます。
それぞれ詳しく見ていきます。
1.桂枝加芍薬湯
(けいしかしゃくやくとう)
過敏性腸症候群の代表的な漢方薬です。ガス型の人にまず試してもらいたい漢方薬。
どんな漢方?
桂枝加芍薬湯は、体を温めて緊張をほぐす効果がある過敏性腸症候群の代表的な漢方薬です。体力がない人に向きます。
近年、西洋医学的な臨床試験で過敏性腸症候群に効果があることが認められていて、過敏性腸症候群のガス症状、下痢、便秘、腹痛の全般に使われています。
腸の過剰な運動や緊張を抑える漢方薬なので、ガス型に効果があります。
桂枝加芍薬湯は、腸の過剰な運動や緊張をやわらげる「芍薬」という生薬が多めに配合されていて、鎮静、鎮痛、けいれん止めの効果が高められています。
また、その他の配合生薬の「桂皮」と「生姜」は血行を良くして体を温める効果があり、「大棗」と「甘草」は「芍薬」と一緒に緊張をほぐして痛みを緩和します。
これらの生薬がいっしょにはたらいて、腸の過剰なぜんどう運動や緊張を抑えて過敏性腸症候群を改善します。
頻繁に便意をもよおすのに少ししか便が出ないしぶり腹という症状にも効きます。
漢方薬は体のいろいろな症状に応用できるものが多いですが、桂枝加芍薬湯は腸に特化した漢方薬といった感じで、過敏性腸症候群のほかに使うとしたら腸炎くらいです。
副作用や注意点
特に無し
配合生薬
芍薬、桂皮、大棗、甘草、生姜
2.桂枝加芍薬大黄湯
(けいしかしゃくやくだいおうとう)
△ 桂枝加芍薬大黄湯エキス顆粒 24包(12日分) 3240円
ガスの症状に加えて便秘もある人はこの漢方がいいでしょう。
どんな漢方?
先ほど紹介した「桂枝加芍薬湯」に「大黄」という生薬を加えた漢方薬です。
大黄は、便秘を改善する下剤としての作用がある生薬です。
大黄以外の配合生薬は「桂枝加芍薬湯」と同じなので、同じ症状でも便秘がない人は先ほど紹介した「桂枝加芍薬湯」を、便秘がある人は「桂枝加芍薬大黄湯」というように使い分けるといいでしょう。
ただ、大黄はやや刺激が強い生薬なので、飲むと下痢をしてしまう人もいます。そういう人は、「桂枝加芍薬湯」にもゆるやかな便秘改善効果があるので桂枝加芍薬湯がいいです。
高齢者や妊娠中の人は大黄の刺激が問題になりやすいので「桂枝加芍薬湯」でいいでしょう。
副作用や注意点
飲むと下痢をする場合もあります。
配合生薬
芍薬、桂皮、大棗、甘草、大黄、生姜
3.大建中湯
(だいけんちゅうとう)
△ 腹寒散 60包(20日分) 6912円
(大建中湯は市販品がほとんどなく薬局や通販で買えないので、病院で処方してもらうのがおすすめ。または、大建中湯に基づいて似せて作られた「腹寒散(ふっかんさん)」は通販で買えるので試してみてもいいと思います。)
大建中湯は、腸を中心とした腹部の症状に病院でもよく処方される漢方薬です。「お腹が冷えて痛み、腹部膨満感のある人」に効果があるとされています。
どんな漢方?
大建中湯は体力がない人で、腹痛や腹部膨満感、腸にガスが溜まって膨れるような状態の時に使う漢方薬で、過敏性腸症候群の人にもよく処方されます。
過敏性腸症候群のなかでも主に腹痛とガスの症状に効きますが、下痢や便秘をしていても使えます。
過敏性腸症候群のガス型の人の中でも、腸がモクモクと動いているのが皮膚の上から見てもわかるような人、お腹にガスがたまって苦しいという人に向きます。
大建中湯に配合されている生薬はすべて体を温める効果のあるもので、「人参」は胃腸を温めることで血流を良くし滋養強壮作用があり、「山椒」は腸管を刺激して腸管の働きを活発にする作用、「乾姜」は体の機能低下と低体温を回復させる作用があります。
これらの生薬がいっしょに働いて、血流をよくしてお腹を温め、腸や胃の動きをよくすることで腹部のさまざまな症状を改善します。実際に近年の基礎研究で、動物実験で腸管の血流を増やす効果が確かめられています。
過敏性腸症候群の他には、
・胃下垂
・胃アトニー(胃の働きが悪い)
・手術後の腸閉塞防止
など胃腸の働きが悪いような症状に使います。
腸を正常化して便秘を改善するので、下剤が入った漢方だと刺激が強いという人も飲めます。
副作用や注意点
配合されている生薬が、乾姜、人参、山椒、膠飴、と単純なものなので副作用が少なく安全性が高いですが、胃の不快感、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が出たり、もともとあるそれらの症状が悪化した場合は飲むのをやめましょう。
配合生薬
乾姜、人参、山椒、膠飴
まとめ
・桂枝加芍薬湯…過敏性腸症候群に使う基本の漢方薬。ガス型だけでなく下痢、便秘、腹痛など過敏性腸症候群の症状すべてに使える。腸の過剰な運動を抑える効果がある。
・桂枝加芍薬大黄湯…桂枝加芍薬湯に下剤の作用がある大黄を加えたものなので、ガスのほかに便秘もある人はこっちを選ぶ。
・大建中湯…お腹が冷えて痛み、腹部膨満感(ガス型)のある人に。
まずは過敏性腸症候群の代表的な漢方である「桂枝加芍薬湯」を試して(便秘があるなら桂枝加芍薬大黄湯)、効かないようなら「大建中湯」に変えてみてどっちが効くのか、はたまたどっちも効かないのかを試すという流れがいいと思います。
「大建中湯」は市販では手に入りにくいので、病院で処方してもらうか、大建中湯に似せて作られた「腹寒散」は配合されている生薬がほとんど同じなので「腹寒散」を試してみてもいいでしょう。
ガス型で困っている方の参考になればいいなと思います。
また、「過敏性腸症候群に良いハーブティー【厳選】7個」のページの中で、ガス型に効くハーブティーも3つ紹介しています。興味のある方はご覧ください。
プレゼントなび