覚えがなく原因が分からないのに足の甲が痛い。
「これはただの捻挫?」
「それとも他の原因の痛み?」
と心配になりますよね。
足の甲は26個の骨が複雑に存在するので、骨折や関節のズレなど痛めやすい場所です。
このページでは、足のクリニック院長の桑原靖 著「放っておくと怖い足の痛みと不調を治す本」や、
足のスペシャリストである、うさみ整形外科院長 宇佐美則夫 著「足の痛みを正しくとる」などを引用しつつ、
足の甲の痛みの原因
足の甲の痛みの症状
足の甲の痛みの治し方
をわかりやすく解説します。
足の甲が痛むときに考えられる原因は、20個程度に絞られます。
本ページでは、「痛み方」や「痛む場所別」に20個の原因を説明するので、足の甲の痛みの原因が特定できるようになっています。
気をつけなければならない「骨折」や「内科系の病気」もほぼ網羅しています。
治し方まで紹介しているので、じっくり読んで治しましょう。
※引用・参考文献は記事最下部に記載しています。
目次
【場所別】足の甲の痛み原因MAP
まず、自分の足の甲の痛い場所と下図を照らし合わせて、原因を確認しましょう。
図中の番号順に、後ろで詳しく説明しているので参照ください。
◆2.関節リウマチ は、上図の部分以外にも、全ての指の付け根に痛む可能性があります。
ここで、自分の痛い場所にマッチするものがあった人は、目次から気になる箇所に飛んでください。
「まだよく分からない」という人は、正確に原因を特定するために、次の「よくある原因TOP5」も見ていきましょう。
また、親指のあたりが痛い人はこちらの記事もご覧ください。
よくある原因TOP5
足の甲の痛みでよくある原因は以下の5つです。
参考にしてください。
- 6.足趾伸筋腱炎
…誰でもなりえる - 18.外側じん帯損傷
…足をひねってしまうと起きる - 5.中足骨疲労骨折
…スポーツや歩きすぎなど - 12.第5中足骨基部骨折(腓骨筋腱捻挫)
…足をひねってしまうと起きる - 1.痛風
…ビールや肉などの暴飲暴食で起きる。中年男性に多い
続いて、「痛み方」などから、原因をさらに特定していきましょう。
痛み方・年齢・性別から原因を特定する
痛み方
原因の多くは、歩くと痛みます。
でも、下記のような「特徴的な痛み方」をする場合は、原因が絞られます。
- 安静にしていても痛い
…1.痛風、2.関節リウマチ(この2つ以外の可能性もあります) - 腫れて痛い
…1.痛風、7.リスフラン関節脱臼、20.変形性足関節症 - しびれ、まひがある
…3.腓骨神経麻痺
スポーツの有無
また、日頃からスポーツをしていない人は、下記の原因に絞られます。
- スポーツをしていないが、足をひねった覚えがある
…12.第5中足骨基部骨折(腓骨筋腱捻挫)、18.外側じん帯損傷 - スポーツをしてないしひねった覚えもない
…1.痛風、2.関節リウマチ、3.腓骨神経麻痺、4.第二ケーラー病(まれ)、6.足趾伸筋腱炎、7.リスフラン関節脱臼、8.ハイアーチ、15.外脛骨障害、16.第一ケーラー病(まれ)、17.癒合症、19.足根洞症候群
逆に、スポーツをしている人は20の原因全てに可能性があります。
年齢・性別
さらに、性別や年齢によって多い原因もあります。参考にしてください。
- 女性に多い
…2.関節リウマチ、8.ハイアーチ、20.変形性足関節症 - 男性に多い
…1.痛風 - 子供に多い
…15.外脛骨障害、16.第一ケーラー病(この病気自体かなりまれ) - 中高生に多い
…4.第二ケーラー病(この病気自体まれ)、15.外脛骨障害、17.癒合症
※関節リウマチは、早期治療が非常に大事な全身性の病気なので、念のためチェックしておくことをおすすめします。(特に女性)
痛いのは骨?筋肉?神経?
足の甲が痛いときは、「骨」「腱」「じん帯」「関節」などが傷ついていることが多いです。
痛み方に特徴があるものを書いておきます。
- 関節が痛んでいる場合
…動き始めに痛くて動き始めてしばらくすると痛みが軽くなることが多い。 - 筋肉痛の場合
…動き始めが痛いですが動いている間ずっと痛いのが特徴。 - 神経が痛んでいる場合
…じっとしていても痛いことがほとんどで、むしろ動いていると気がまぎれて痛みが軽くなることもあります。安静にしていてもビリビリ・ピリピリ痛みを感じて痛むときと痛まないときがあり、周期的に痛むのが特徴。
それぞれの症状・治し方の解説
自分の痛みの原因に見当はつきましたか?
足の甲の痛む場所を、「前方(つま先の方)」「真ん中」「後方(足首の方)」の3つのエリアに分けて、それぞれの原因・治し方を詳しく見ていきます。
以下をクリックして気になる箇所に飛んでください。
【前方の痛み】
1.痛風
2.関節リウマチ
3.腓骨神経麻痺
4.第二ケーラー病
5.中足骨疲労骨折
【真ん中の痛み】
6.足趾伸筋腱炎
7.リスフラン関節脱臼・骨折
8.ハイアーチ
9.痛風
10.リスフランじん帯損傷
11.第5中足骨疲労骨折
12.第5中足骨基部骨折、腓骨筋腱捻挫
【後方の痛み】
13.関節リウマチ
14.舟状骨疲労骨折
15.外脛骨障害
16.第一ケーラー病
17.癒合症
18.外側じん帯損傷
19.足根洞症候群
20.変形性足関節症
【前方の痛み】
1.痛風
痛みを感じる場所は、「親指の付け根」か「足の甲」が多いです。赤く腫れ、激痛です。
中年以降の男性に多く、安静にしていても痛いです。
症状・原因
痛風は手などにも出る全身の病気ですが、足では、「親指の付け根」か「足の甲」に出やすいです。
特に「親指の付け根」が多く、『男性が親指の付け根を痛がるときは痛風を疑え』とも言われています。
突然の激痛と患部が赤く腫れあがるのが特徴です。
名前の通り、「風が吹いても痛い」というほど痛みが強いです。
1度に1ヶ所だけ症状が起こります。
これは、ビールや肉に多く含まれる尿酸が血中に多くなり、それがかたまりとなって血管から出て、関節に溜まって炎症を起こしているためです。
激しい運動後に多量のビールや肉などを暴飲暴食すると、その夜間に痛風の激痛が起きます。
腫れが広範囲に広がり、熱が出ることもあります。
治し方
安静・冷却が大切です。
基本的に内科の領域なので、内科に行きます。
血液検査で尿酸値を測定して診断されます。
痛風の痛みが起きているとき(痛風発作と言います)は、患部を冷やしたり、炎症を抑える薬やステロイド注射をします。
痛みがない時(痛風発作と痛風発作の間)は、以下3つの方法で尿酸値をコントロールします。
・薬物療法
・食事療法
・日常生活の注意
全身に影響が及ぶ病気で、症状がたまたま足に出ているという状態なので早めに治療しましょう。
病院に行けない場合の応急処置は、市販の鎮痛薬「ロキソニン」を飲むと痛みが和らぎます。
再発防止方法
一旦痛風になると繰り返します。
まず暴飲暴食を控え、太り気味ならダイエットするようにしましょう。(痛風は昔は「ぜいたく病」とも言われていました。)
尿酸が血中に増えないように、プリン体の少ない食生活にします。
痛風は比較的コントロールしやすい病気です。
でも、長い間、高尿酸血症を放置すると腎臓に尿酸結晶が沈着して腎不全を起こすこともあるので、医者から薬や食べ物の指導などを受けましょう。
また、親指の付け根に痛風発作が起きる人は、もともと親指の付け根に負担がかかるような足の形をしている(アーチが崩れている)人が多く、その人がたまたま尿酸値が高くなるとそこに痛風発作が起きているのではないか、とも言われています。
なので、予防のために、普段から足のアーチを整えることもおすすめです。
2.関節リウマチ
痛みを感じる場所は、足の指の付け根(特に親指に多い)か、足首より少し前の親指側の甲の部分です。
30~50代の女性に多く、男性は少ないです。関節リウマチの8割は女性です。
症状・原因
関節リウマチとは、本来は体に異物が入ると攻撃する「免疫作用」に異常が起きて、間違って自分自身の体を攻撃してしまい、骨が破壊され関節が変形してしまう病気です。
その原因は、遺伝・細菌やウイルス感染・環境などが考えられていますが、現時点で明確な原因が分かっていません。
初期症状は、朝目が覚めたときに、足がなんとなくむくんでこわばっていて、動かしにくい状態が短時間つづきます。この症状ほぼ毎日続いて起こります。
次は、足の指から足の甲の真ん中あたりの関節まで痛みが広がり、動かさなくても痛んできます。さらに、関節が腫れてきます。
最初は痛みがそれほどでもない場合が多いですが、早期治療が非常に大事な病気です。関節リウマチの可能性がある人は早く病院に行ってください。
長い期間進行すると、関節が変形してしまいます。
関節リウマチは足だけでなく全身性の病気です。そのため、体のあちこちの関節に起きる可能性がありますが、足では特に、下図の部分に起きることが多いです。指の付け根では、特に親指の付け根が一番多いです。
左右対称の関節に起きるという特徴もあります。
圧倒的に女性に多い病気で、患者の8割が女性です。
男女ともに、30~50代の発症が多いですが、15歳以下や60歳以上で発症することもあります。
治し方
診断には専門的な知識が必要です。X線や血液検査を行います。
また、血液検査だけでは診断できず、専門家でも最初は関節リウマチの診断に迷う時がありますが、血液検査の新しい項目も保健適応になり、診断の精度は上がってきています。
関節リウマチは、内科と整形外科の両方に専門家がいますが、どちらも大きな違いはありません。
治療方法は薬が基本です。使う薬の種類は以下の4種類です。
・消炎鎮痛剤…一時的に痛みを止めるだけで根本的治療ではない。
・ステロイド…こちらも痛みを止めるが、根本的治療ではない。
・抗リウマチ剤…免疫を調整する薬。進行を遅らせる。
・生物学的製剤…関節の破壊を止める。今一番リウマチに効果のある薬。
適切な靴や装具を装着して、正しい位置で骨と骨をくっつけることも重要な治療として行われています。正しい位置でくっつくと、痛みも無くなり安定化して、装置も不要になります。
3.腓骨神経麻痺
(ひこつしんけいまひ)
スネの外側~足の甲~指の付け根(小指以外)にしびれが起きます。
これは、ふくらはぎに「腓骨神経」という神経が通っていて、ここには筋肉がなく、外からの圧迫でこの神経が骨と骨の間にはさまれて、マヒが起きるものです。
その「腓骨神経」は何本かに分かれているので、はさまれた神経によって、上図のようにしびれや痛む範囲が変わります。
長時間足を組んでいたり、太ももから下にギブスをつけているときなどに起こります。これらの原因を早く取り除くことが治療になります。
4.第二ケーラー病
(別名:フライバーグ病)
痛みを感じる場所は、人差し指の付け根です。押すと痛みがあります。
12~18歳の女性にまれに起こる病気です。
人差し指の付け根の骨の成長部分への血行の流れが悪くなり、部分的に成長が止まったり骨が壊死するために起こります。(原因は不明とされています。)
早期発見、早期治療が大事です。
患部の部分が分厚い中敷を入れて、患部への圧迫を軽減します。痛みが取れない場合は、手術をします。
5.中足骨疲労骨折
(ちゅうそくこつひろうこっせつ)
痛みを感じる場所は、足の甲の中央のやや前方部分です。
過度のスポーツや仕事によって、目に見える傷がなくここが痛む場合はこれを疑います。
症状・原因
「疲労骨折」とは、繰り返し同じ動きをして骨がもろくなり骨折することを言います。
疲労骨折は全身のいろいろな骨に起こりますが、その中でも「中足骨疲労骨折」はよく起きます。
足の疲労骨折のうちでもっとも発生頻度が高いです。
「中足骨疲労骨折」は、主に人差し指か中指どちらかの付け根の細長い骨(中足骨と言います)が折れます。
昔は、軍隊で長時間重い荷物を背負って歩いた後によく起こっていました。
最近は、激しいスポーツの練習によって起こります。特に中高生のサッカー部・野球部や長距離ランナーなどに起こりやすい骨折です。
治し方
中足骨疲労骨折の予後は良好で、約1ヶ月スポーツなどの原因を中止したり運動量を落とすだけで自然に治ります。
痛みが続く場合は、整形外科に行きましょう。
最初は、レントゲン検査ではっきりと骨折がわからないことが多く、痛みが発生して1週間~10日後にレントゲンで骨折が確認でき、同時に新しい骨の形成が見られ、徐々に治癒します。
3週間程度の安静で痛みも取れます。
再発防止方法
再発がしばしば起きるので、運動量や仕事量を調整しましょう。
スポーツシューズに縦と横のアーチをつけた中敷を入れます。
【真ん中の痛み】
6.足趾伸筋腱炎
(そくししんきんけんえん)
親指から甲になぞっていく線上に痛みを感じます。
親指が多いですが、他の指にも起こることがあります。
スポーツをしていなくても老若男女だれもが可能性があります。
症状・原因
足趾伸筋腱炎は、よく起きます。
足の甲は、足にかかる重さや衝撃をやわらげるためにアーチ状になっています。
実際に、親指から甲の中央になぞっていくと、少し飛び出している部分があります。ここはアーチのために少し角度がついているので、関節の端と端が誰でも少し角張っています。
そして、この角張っている所の上に、親指の「腱(けん)」が通っています。
(腱とは、骨と筋肉をつなぐ細長いスジのようなものです。)
靴がこの部分を圧迫する形でできているので、腱が炎症を起こして痛みます。
さらに、加齢によって自然とこの関節がさらに飛び出してくることがあり、さらに圧迫されて痛みます。
また、ハイヒールの履きすぎで足が「ハイアーチ型」になっている人も圧迫されやすく、痛みやすいです。
同じことが足の指全部に起こる可能性があるので、下図の赤線上が痛む可能性があります。
治し方
シップやクリームで様子を見たり、甲を圧迫しない靴にします。
きつすぎる靴はもちろんですが、ゆるすぎる靴も足が靴の中で動きすぎて腱が炎症を起こすこともあるので、ちょうどいい靴を選ぶことが大事です。
骨の変形などで飛び出しが強い場合は、手術で飛び出した部分を削ることもあります。
再発防止方法
甲を圧迫しないサイズのあった靴を選ぶ。
7.リスフラン関節脱臼・骨折
痛みを感じる場所は、足の甲の少し高く盛り上がっている部分です。その中でも親指側が痛いことが多い。
スポーツや事故などで足に衝撃を与えた場合に起こりやすい。
腫れを伴い、強く痛みます。
症状・原因
足の5本の指の付け根の部分を「リスフラン関節」と呼びます。
(関節とは、骨と骨をつないで動く部分です。)
つま先立ちの状態で、上から急激な大きな力が加わると、このリスフラン関節の骨同士の位置がずれて(脱臼)、骨折を伴います。脱臼だけで済む場合もあります。
脱臼・骨折が起こると同時に、その場所が腫れて強く痛みます。
一番多いのは、親指と人差し指の付け根のリスフラン関節に、脱臼が起きるパターンです。
具体的には、親指の付け根の骨が内側に、人差し指~小指の付け根の骨が外側にずれて(脱臼)、親指と人差し指の付け根の間が骨折を伴わずに開いて、わずかに脱臼します。(下図参照)
これは、スポーツ時に、走ってカーブを曲がろうとしたときに足がつま先立ちになることで起きます。
この脱臼は痛く、スポーツを妨げます。
また、バイクの事故では、つま先が地面などに急激に当たって、5本の指の付け根が全て外側にずれて(脱臼)、さらに骨折も伴うこともあります。
こちらのサイトでは、日常生活でもリスフラン関節脱臼が起こることが説明されています。併せてご覧ください。
治し方
脱臼・骨折が起こると同時に、その部分が腫れて強く痛みます。
整形外科に行って、脱臼やそれに伴う骨折の程度を見てもらいます。脱臼したまま日時が経過すると元に戻らなくなるので注意してください。
医師が手でずれを戻すことが可能で、戻した状態が安定していれば、ギブスで固定します。
(脱臼しているとズレた骨の周りの関節包(関節のふくろのようなもの)やじん帯も傷ついているので、ギブスで固定してそれらが修復するのを待ちます)
戻らなかったり、戻した状態が不安定な場合は手術をします。手術は、固い糸(鋼線)やスクリューというネジのようなものでズレを固定し、3、4週間ギブスで固定します。
ギブスを外した後は足関節をのばしたり曲げたりするリハビリをします。
8.ハイアーチ
痛みを感じる場所は、足の甲の高くなっている部分です。
誰にでも起こりますが、ハイヒールを履く女性に多いです。
症状・原因
ハイアーチとは、足の甲が高い状態のことです。
「ハイヒールの履きすぎ」が原因で甲が高くなっている場合が多いです。
指の付け根やかかとにマメやタコができやすい人はハイアーチの可能性が高いです。
神経麻痺が原因のこともあります。(神経麻痺が起こると筋肉のバランスに影響が出るため)
この高くなった部分が靴に当たって痛みます。これが進行すると、靴に当たっている部分の腱を痛めて「足趾伸筋腱炎」が起こります。
治し方・再発防止方法
なるべくヒールの低い靴を履くようにする。
ハイヒールを履く時間を短くして、ストレッチで足の甲を柔軟にするように心がける。
9.痛風
詳細は、「1.痛風」に飛んでください。
10.リスフランじん帯損傷
痛みを感じる場所は、親指と人差し指の間を甲にそってなぞっていった甲の真ん中あたりです。
激しいスポーツが原因のことが多いです。
症状・原因
「じん帯」とは、骨と骨をつなぐ丈夫な短いベルトのようなものです。
そのじん帯が部分的に断裂したりすると、とても痛いです。腫れることもあります。
足は、26個もの骨があるので、それらをつなぐじん帯もたくさんあり、「じん帯損傷」(じん帯が部分的に断裂したりねじれること)がよく起きます。
足の「じん帯損傷」で1番多いのが「外側じん帯損傷」で、2番目に多いのがこの「リスフランじん帯損傷」です。
「リスフランじん帯」とは、甲の真ん中あたり親指側にある関節のじん帯で、親指と人差し指の付け根をつなぎとめるじん帯です。
足の中心軸は人差し指なので、ここは負荷がかかる部分です。
そのため、強固に作られていますが、激しいスポーツなどで損傷することがあります。
治し方
痛み止めで痛みを抑え、冷やしたりシップをします。
決して無理に動かさず、冷やして炎症を抑えます。病院に行くのが良いですが、自分でもサポーターやテーピングで固定して、安静にします。
ちゃんとじん帯がくっつかないと後から痛みがでることがあるので、1ヶ月以上サポーターなどで保護すると良いです。
じん帯は修復力があり、部分的な断裂やねじれなら時間が経てば大分元に戻ります。
ただ、元に戻るとは言っても完全に元に戻るわけではなく、その部分は弱ってしまうので繰り返す可能性があるので注意します。
完全に切れてしまったじん帯は、手術しない限り、完全にくっつくことはないですが、切れてすぐ手術をするのはスポーツ選手くらいで、普通はあまりすぐ手術をしません。
まずは、安静にして治るのを待って、半年~1年経っても痛みが取れない場合は手術を検討します。
11.第5中足骨疲労骨折
(だいごちゅうそくこつひろうこっせつ)
痛みを感じる場所は、小指の延長線上の甲の部分です。
過度のスポーツ(特にサッカー)によって、目に見える傷がなくここが痛む場合はこれを疑います。
症状・原因
疲労骨折とは、繰り返し同じ動きをして骨がもろくなり骨折することを言います。
疲労骨折は全身のいろいろな骨に起こりますが、これは足の小指の付け根の細い骨(第5中足骨と言います)が折れるものです。
別名ジョーンズ骨折ともいい、サッカー選手に最も多く発生します。
治し方・再発防止方法
この骨折は再発を繰り返すことが多いため、手術療法をします。
手術は、小指の付け根の細い骨(第5中足骨)に、後方から(かかと側から)スクリューという金属の棒を入れて骨を固定し、そのままサッカーなどのスポーツを再開します。
「第5中足骨疲労骨折」かもしれない場合は、整形外科に行きましょう。
12.第5中足骨基部骨折、腓骨筋腱捻挫
(だいごちゅうそくこつきぶこっせつ、ひこつきんけんねんざ)
痛みを感じる場所は、小指の延長線上の細長い骨の部分です。(触ると少し飛び出している部分)
足を内側にひねった(足裏が内側を向く動き)覚えがあって、ここが歩くと痛む人はこれを疑います。
症状・原因
「第5中足骨基部骨折」と「腓骨筋腱捻挫」は同じ原因で起きるのでまとめて説明します。両方同時に起きたり片方だけ起きたりします。
これは、足の捻挫で発生するので、発生頻度は高いです。
この2つは、足を内側にひねった(足裏が内側を向く)時に起きます。
なぜ内側にひねる時に起きるのかと言うと、小指の延長線上の細い骨(第5中足骨)には、固い「腱(けん)」がくっついています。
(腱とは、骨と筋肉をつなぐ細長いスジのようなものです。)
この「腱(けん)」は丈夫で切れないので、ひねった時に「第5中足骨」が「腱」にひっぱられて、「第5中足骨」が骨折します。これを「第5中足骨基部骨折」と呼びます。
同時に、その「腱」自体も傷つくことがあり、それを「腓骨筋腱捻挫」と呼びます。
この骨折は、折れた部分が大きく離れることはなく、痛みも強くないです。
ただ、歩くと痛みます。
治し方
歩くと痛むので、サポーターかギブス固定(程度によって数日から数週間固定)をします。
手術をしなくても十分に骨はくっつきます。
【後方の痛み】
13.関節リウマチ
詳細は、「2.関節リウマチ」に飛んでください。
14.舟状骨疲労骨折
(しょうじょうこつひろうこっせつ)
痛みを感じる場所は、親指と人差し指の間を甲に向かってなぞっていき、ちょうど土踏まずの頂点の真上にあたる甲の部分です。
思春期の過度のスポーツによって起こります。
症状・原因
疲労骨折とは、繰り返し同じ動きをして骨がもろくなり骨折することを言います。
「舟状骨」は、ちょうど土踏まずのアーチの頂上部にあたり、激しい運動が続くと負荷が集中して骨折が起こります。
中高生の部活動や、バスケットボール選手などに起こります。
治し方
この骨折は痛みが強いので、ギブスで固定して歩きます。
痛みが無くなり骨の癒合が確認できたら、スポーツが再開できます。
具体的には、3週間ギブス固定して、その翌週にスポーツを再開した例があります。
痛みが発生してから長い期間経っていても、痛みが続く場合には、手術をして舟状骨をスクリューで固定してからギブスをします。
再発防止方法
スポーツを再開した最初の3ヶ月は、縦アーチを高めにつけた中敷を靴に入れてスポーツをします。
15.外脛骨障害
(がいけいこつしょうがい)
痛みを感じる場所は、内くるぶしの前方下部の甲です。
その部分が膨らんでいる(腫れているのではなくぽこっと出っ張っている)のが特徴。
症状・原因
これは、10~15歳くらいの女の子に多い症状です。
これは、「外脛骨」という“余分な骨”があるために起こります。
実は、足の骨の数は全員同じではなく、生まれつき1,2個過剰についている人が15人に1人くらいいます。
「外脛骨」がついていると、上図で赤丸になっている部分がぽこっと出っ張っているのですぐ分かります。
この部分が靴に当たって痛みが出ることもあります。
「外脛骨」がついているだけなら問題ありません。
でも、下図のように、外脛骨の外側には“後脛骨筋腱”という細長いベルトのようなものが通っていて、腱に引っ張られて外脛骨に負担がかかり、炎症を起こして痛みが出ることがあります。
これは、土踏まずのアーチがない偏平足の人(さらに外脛骨がある人)によく起こります。偏平足だと、土踏まずのアーチが下がるので、腱で上に引っ張る力も強くなるからです。
また、外脛骨が無い人でも、偏平足だと後脛骨筋腱が上に引っ張られる力が強くなるので、その腱が付いている「舟状骨」に負担がかかって痛む場合があります。
治し方
治療の基本は、安静と冷却です。消炎鎮痛剤のシップやクリームを使うこともあります。
偏平足が関係していることが多いので、アーチをささえるインソールで改善することが多いです。
成長と共に、舟状骨と外脛骨がくっつくこともくっつかないこともあります。
手術で舟状骨と外脛骨をくっつけたり、外脛骨を摘出することもでますがあまり一般的ではありません。
16.第一ケーラー病
これはまれな病気です。4~7歳の男の子に多いです。
歩き方がおかしかったり、歩くと痛がる場合に、レントゲンを撮ると、足の甲の内側寄りにある「舟状骨」に変形があります。
土踏まずやその真上の甲が痛みます。
基本的に自然に治ります。痛い場合はインソールや歩行用ギブスをします。
17.癒合症
(ゆごうしょう)
痛みを感じる場所は、足首に近い甲の部分です。
スポーツをしている中学生に比較的多い。
症状・原因
癒合症とは、名前の通り、足の甲の骨同士がくっついてしまう症状です。
骨と骨の間に隙間があれば、関節はスムーズに動きますが、癒合症だと骨と骨が微妙にくっついているため、動かすと痛いです。
その原因は、「生まれつき」、「加齢」、「足の使いすぎ」などです。
レントゲンで診断でき、下図の「踵骨」「立方骨」「舟状骨」「距骨」のあたりのどこかが微妙にくっついています。
「距骨」と「舟状骨」がくっついていると甲が痛み、「距骨」と「踵骨」がくっついているとくるぶしの下あたりが痛みます。
ただ、レントゲンでもわかりずらいことが多く、医師から「原因不明」と言われてしまうこともあります。
スポーツなど足を良く使った後に痛みが強くなることが多く、激痛という人から、なんとなく違和感があるという人まで症状はさまざまです。
また、癒合症になっている人は、「足根洞症候群」になっている可能性があります。癒合症が原因で関節にトゲのようなものができ、神経を刺激している可能性があるからです。
治し方
足のアーチを支えるインソールや、シップ、クリームでもある程度よくなります。
でも、癒合症は、手術が非常に有効です。
骨がくっついているところを手術ではがすと、劇的に痛みが取れる場合もあります。
18.外側じん帯損傷
(がいそくじんたいそんしょう)
痛みを感じる場所は、外くるぶしの少し前方の下部、もしくは外くるぶしの真下あたりです。
スポーツをしていなくても老若男女だれでも足をひねった時に起きます。かなり発生頻度が高いです。
症状・原因
足を内側(足裏が内側を向く)に捻挫すると起こります。
「じん帯」とは、骨と骨をつなぐ丈夫で短いベルトのようなものです。
足には26個も骨があるので、その骨と骨をつなぐ「じん帯」もたくさんあります。
そのたくさんある足のじん帯の中でも、外側(小指側)のくるぶし周辺にある「外側じん帯」は一番傷つけやすいです。
上図のように、前距腓じん帯・踵腓じん帯・後距腓じん帯の3つをまとめて「外側じん帯」と呼びます。
なぜこの外側じん帯の損傷がよく起きるかと言うと、「内側じん帯」(親指側くるぶし周辺のじん帯)は4つのじん帯でガッチリ構成されているのに対して、「外側じん帯」は主に「前距腓じん帯」と「踵腓じん帯」の2つだけで支えているので内側に比べて弱いためです。
さらに、足の構造上、足は内側にひねりやすくなっていて、ひねる範囲も外側にひねるより大きいです。
内側にひねると、まず、ひっぱられて「前距腓じん帯」が切れます。(前距腓じん帯損傷)
さらに強くひねると「踵腓じん帯」も切れます。(踵腓じん帯損傷)
「後距腓じん帯」が切れることはまれです。
・前距腓じん帯損傷
・踵腓じん帯損傷
上記2つをまとめて「外側じん帯損傷」と呼びます。
「外側じん帯損傷」は、じん帯が伸びた程度のものから、完全に切れたものまで、重症度はさまざまです。
この「前距腓じん帯」は、関節のふくろ(関節包)と一緒になっているので、完全に切れると出血して捻挫した翌日には、腫れと皮下出血が出て、周辺が赤紫色になります。
※子供は骨折を伴うことがあります。
治し方
捻挫した直後、外側を中心に腫れてきた場合は、すぐに水や氷をタオルに含ませたり包んだりして冷やします。
冷やして1~2時間後にはシップを貼っり、捻挫した部分を少しきつめに「圧迫固定包帯」という商品があるので、それで固定して安静にします。
次の日に、赤紫の皮下出血があり、歩くときに痛いのが続いているなら、整形外科に行ってください。
病院ではレントゲンを撮り、程度が軽い場合は、サポーター固定を2週間ほど行い、腫れや痛みが無くなってから、主に足を外側にひねる(足裏が外側を向く)訓練など、筋肉を増強するリハビリをします。
重症の場合は、手術でじん帯を縫い合わせることもあります。
でも、スポーツ選手を対象に、ギブスやサポーターで固定しただけの治療と、手術でじん帯を縫い合わせた治療が長い間比較検討されてきましたが、どちらも治療後の成績は同等という結果がでました。
そのため、ほとんどの整形外科医は手術ではなく、サポーターやギブスの固定法を採用しています。
再発防止方法
手術をした場合も、ギブス・サポーターで固定しただけの場合も、捻挫の再発防止のために、足を外側にひねる(足裏が外側を向く)訓練が大事です。
具体的には、足に重さのあるサポーターを巻いて負荷をかけた状態で、力を入れて小指側に足を上げる訓練です。
これを強力に行うと、内側にひねる捻挫(足裏が内側を向く)が再発しなくなります。
スポーツ前に、他の部位よりも入念にストレッチすることもおすすめです。
19.足根洞症候群
(そっこんどうしょうこうぐん)
外くるぶしの少し前の所で、触るとくぼんでいる部分が痛みます。
部分的ではなく「足全体」が痛むと感じる人もいます。
症状・原因
激痛で歩けなくなる人から、でこぼこした道を歩くときだけ痛む人まで痛みの程度はさまざま。
「足のバランスが不安定に感じる」「違和感がある」「足全体が痛い」など人によって感じ方もさまざまで、見分けにくいのですが、
・外くるぶしの前を押すと痛い
・片足だけ痛い
という人は足根洞症候群の可能性が高いです。
この部分は骨の構造上、空洞(くぼみ)になっているので、「足根洞」と呼びます。
その「足根洞」に炎症が起きて痛みが出ていることを「足根洞症候群」と言います。
安静にしたり、シップをしてもなかなか治らないので原因不明の痛みと言われてしまうこともあります。
ただ、この足根洞症候群の原因で一番多いのは、骨と骨がくっついてしまう「癒合症」です。もし癒合症が原因なら手術で骨と骨をはがしてあげると劇的に良くなることがあります。
また、捻挫が原因で起こることもあります。
20.変形性足関節症
(へんけいせいそくかんせつしょう)
足首あたりが痛みます。女性に多いです。
歩き始めに足首の内側が痛み、しばらくあるくと和らぎますが、さらに歩くと再び痛み、そのうちに腫れてきます。
さらに進行すると、足首の関節の動く範囲が小さくなります。
これは、足首の関節の軟骨が加齢とともにすり減って、軟骨の下の骨と骨とがすれたり変形して痛みがでるものです。
加齢など特に原因がない場合と、過去に足首の捻挫や骨折を繰り返したことが原因の場合があります。
変形は治りませんが、痛みを減らすためにサポーターによる固定やインソールを使ったり、運動療法をします。変形や痛みが強い場合は、人工足関節や足関節固定術などの手術をします。
(参考文献: 高井 信朗(2014)『全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患』成美堂出版、桑原 靖(2016)『放っておくと怖い「足の痛みと不調」を治す本』宝島社、宇佐美則夫(2014)『足の痛みを正しくとる』メディカルトリビューン、高倉義典(2016)『名医が教える 足のお悩み完全解決バイブル』誠文堂新光社、井尻 慎一郎(2014)『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』創元社、日経ヘルス(2014)『足と脚の悩みを解決』日経BP社、高山かおる(2013)『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』家の光協会、主婦の友社(2010)『家庭の医学』主婦の友社、坂口 顕(2013)『理学療法士のための足と靴のみかた』文光堂、井尻 慎一郎(2017)『知りたいことがよく分かる 整形外科Q&Aハンドブック』創元社、日経ヘルス(2015)『忙しい女性のための 足の悩みまるごと解決バイブル』日経BP社、桑原 靖(2017)『日常診療でよく出会う足病変の診かた』中外医学社)
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