覚えがなく原因が分からないのに、足の親指の付け根が痛い。
「原因は何?」
「何かの病気?」
と心配になりますよね。
このページでは、足のクリニック院長の桑原靖先生 著「放っておくと怖い足の痛みと不調を治す本」や、
足のスペシャリストである、うさみ整形外科院長 宇佐美則夫先生 著「足の痛みを正しくとる」などを引用しつつ、
よくある原因
症状
治し方・応急処置
を、わかりやすく解説します。
「痛み方」や「症状別」に説明するので、原因が特定できるようになっています。
気をつけるべき「内科系の病気」も網羅しています。
とりあえずの応急処置まで紹介しているので、じっくり読んで治しましょう。
※引用・参考資料は記事最下部に記載。
目次
よくある原因TOP3
足の親指の付け根の痛みでよくある原因TOP3です。
外反母趾が一番多く、次に痛風、強剛母趾が多いです。
外反母趾は徐々に進行するので、「だんだん痛みが強くなってきた」という人が多く、痛風は「ある日突然痛くなった」という人が多いです。
『足の親指の付け根に痛みがあれば、女性なら外反母趾を、男性なら痛風を疑え』
と、整形外科の新人は教わります。
意外と強剛母趾の人も多いです。
【参考記事】 足の甲のもっと広い範囲が痛い人は↓
その次によくある原因8つ
「外反母趾」「痛風」「強剛母趾」の次によくある8つの原因です。
こちらもよく起きる順に記載しています。
- 種子骨炎
…スポーツをしている10代~20代に多い。親指の肉球あたり(足の裏)が腫れて痛い。 - 関節リウマチ
…30~50代の女性に多い。両足にこわばり・むくみがあり、親指の付け根がだんだん腫れて痛い。進行していると、外反母趾のような変形がある。 - 足趾の末梢神経痛
…親指の付け根に違和感・しびれ・痛みがある。見た目はなんともない。 - 親指の甲の腱を痛めている
…親指の付け根~甲になぞっていく線上が痛い。スポーツをしていなくても誰でもなります。まぁまぁ良くある原因です。 - 親指の疲労骨折
…目に見える傷はないけど親指の付け根が痛い。過度のスポーツや仕事をした人に起きる。 - 腓骨神経麻痺
…親指の付け根に違和感・しびれ・痛みがある。見た目はなんともない。 - 魚の目
…足裏の親指の付け根に魚の目ができているので見れば分かる。歩いたり魚の目が出来ている所を押すと痛い。 - ガングリオン
…親指の付け根に赤みのないプクっとした腫れがある。
痛いのは骨?神経?筋肉?
足の親指の付け根が痛いときは、「関節」「腱」「神経」などが傷ついている場合があります。
痛み方に特徴があるものを書いておきます。
- 関節が痛んでいる場合
…動き始めに痛くて動き始めてしばらくすると痛みが軽くなることが多い。 - 筋肉痛の場合
…動き始めが痛いですが動いている間ずっと痛いのが特徴。 - 神経が痛んでいる場合
…じっとしていても痛いことがほとんどで、むしろ動いていると気がまぎれて痛みが軽くなることもあります。安静にしていてもビリビリ・ピリピリ痛みを感じて痛むときと痛まないときがあり、周期的に痛むのが特徴。
それぞれの症状・治し方の解説
自分の原因の見当はつきましたか?
これから、足の親指の付け根が痛くなる原因を「よく起きる順」に詳しく解説していきます。それぞれの症状・治し方を詳しく紹介しています。
「まだどの原因か分からない」という人は順番に一つずつ読んでみてください。
原因に見当がついた人は、以下をクリックして気になる箇所に飛んでください。
【その次によくある原因】
4.種子骨炎
5.関節リウマチ
6.足趾の末梢神経痛
7.親指の甲の腱を痛めている(足趾伸筋腱炎)
【もしかしたらこの可能性も】
8.足の親指の疲労骨折
9.腓骨神経麻痺
10.魚の目
11.ガングリオン
よくある原因3つ
まず疑うべき3つの原因について、症状や治し方を説明していきます。
1. 外反母趾
(がいはんぼし)
「女性」で、足の親指の付け根が痛いなら、まず外反母趾を疑います。
親指が「く」の字に曲がっているのが特徴。
特に10代と、40代の女性に多いです。
症状・痛み方
外反母趾は、親指が「く」の字に変形して、曲がった付け根が圧迫されて痛みます。
初期は、曲がった部分が靴に当たってマメができる・炎症で赤くなる・熱を持って痛む、などの症状です。
歩くときに親指で蹴りだせないので、足裏の親指・人差し指・中指の付け根にタコができるのも、外反母趾の初期症状です。
圧迫された部分の内部の液が炎症を起こして、↓のようなブニブニした感触の腫れ物が出て痛むことも多いです。
こうなると歩いていなくても痛いです。
さらに変形が進むと、曲がっていく骨自体が痛いと感じる人もいます。
変形がかなり進むと、神経が締め付けられて逆に痛みがなくなります。
原因
外反母趾の直接の原因は、先の細い靴ではなく、「足のアーチの崩れ」です。
足は、足にかかる重さや衝撃をやわらげるためにアーチ状になっています。
足底の筋力の低下によって、この「アーチ」が潰れて、指と指の間が広がってしまいます(平らな足になってしまう)。
アーチが潰れた状態で先の細い靴を履くと、親指の関節がどんどん外側に「く」の字に張り出します。
つまり、そもそも足のアーチの崩れ(足の変形)があり、そこに先が細い靴などが加わって、外反母趾が起こります。
特に10代と、40代の女性に多いです。
10代の場合は、「外反母趾になりやすい足の骨格(筋肉やじん帯が柔らかいなど)」が親から遺伝していることが多く、
40代の場合は、これまでハイヒールを履き続けていたり、中年期の体重増加や足底の筋力の低下によって、足のアーチがつぶれやすいことが原因です。
(それほど「く」の字に曲がっていないという人は、「3.強剛母趾」の可能性があります。確認してください。)
治し方
整形外科に行きます。
まず、消炎・鎮痛作用のあるシップ、クリームや痛み止めを使って、痛みを抑えます。
痛みを抑えたら、足の甲を持ち上げてアーチを作って足の横の広がりを矯正するインソールで対応することが多いです。
大きく変形していて、インソールで矯正しきれず、痛くて靴が履けないほど生活に支障があるなら患者の希望を聞いて手術をする場合もあります。
外反母趾の手術方法は数十種類もありますが、最近では出っ張った親指の骨を短く切って、ネジでまたつなぎ直してまっすぐにする方法が基本です。
手術時間は片足1時間ほどで、翌日からゆっくり歩けます。
ゴムで親指をまっすぐに矯正する体操なども良く見ますが、親指そのものが原因ではないので、無理に矯正しようとすると痛みが悪化します。
応急処置
外反母趾用のバンドエイドで、靴の圧迫を保護します。
根本的な解決にはなりませんが、痛みは大分楽になります。
外反母趾用バンドエイド
4枚 400円
↓このように当たって痛い所に貼ります。
分厚い皮膚のように保護してくれるので、病院に行けない人は応急処置としておすすめです。
進行を防ぐ方法
ヒールが低く、足の幅に合った靴を履く。
先ほど説明した、足の甲を持ち上げて足の横の広がりを矯正するインソールも使うと良いでしょう。
2. 痛風
(つうふう)
「男性」で、足の親指の付け根が痛いなら、まず痛風を疑います。
親指の付け根が赤く腫れ、激痛なのが特徴。
中年以降の男性に多く、安静にしていても痛いです。
中年以降の女性も時々なります。
症状・痛み方
突然の激痛と親指の付け根が赤く腫れあがるのが特徴です。夜間に起こることが多いです。
名前の通り、「風が吹いても痛い」というほど痛みが強いです。医者に触られるのを拒否する人がいるくらいの痛みです。
1度に1ヶ所だけ症状が起こります。
前日に激しい運動をした人、ビールやレバー・イカ・エビなどを暴飲暴食した人は痛風の可能性が高いです。
痛風は手などにも出る全身の病気ですが、特に「親指の付け根」が多いです。
『男性が親指の付け根を痛がるときは痛風を疑え』とも言われるほど。
原因
痛風は、ビールや肉に多く含まれる尿酸が血中に多くなり、それがかたまりとなって血管から出て、関節に溜まって炎症を起こしているためです。
激しい運動後に多量のビールや肉などを暴飲暴食すると、その夜間に痛風の激痛が起きます。
腫れが広範囲に広がり、熱が出ることもあります。
治し方
安静・冷却が大切です。
基本的に内科の領域なので、内科に行きます。
血液検査で尿酸値を測定して診断されます。
痛風の痛みが起きているとき(痛風発作と言います)は、患部を冷やしたり、炎症を抑える薬やステロイド注射をします。
痛みがない時(痛風発作と痛風発作の間)は、以下3つの方法で尿酸値をコントロールします。
- ・薬物療法
- ・食事療法
- ・日常生活の注意
全身に影響が及ぶ病気で、症状がたまたま足に出ているという状態なので早めに治療しましょう。
応急処置
病院に行けない場合の応急処置は、市販の鎮痛薬「ロキソニン」を飲むと痛みが和らぎます。
再発防止方法
一旦痛風になると繰り返します。
まず暴飲暴食を控え、太り気味ならダイエットするようにしましょう。(痛風は昔は「ぜいたく病」とも言われていました。)
尿酸が血中に増えないように、プリン体の少ない食生活にします。
痛風は比較的コントロールしやすい病気です。
でも、長い間、高尿酸血症を放置すると腎臓に尿酸結晶が沈着して腎不全を起こすこともあるので、医者から薬や食べ物の指導などを受けましょう。
また、親指の付け根に痛風発作が起きる人は、もともと親指の付け根に負担がかかるような足の形をしている(アーチが崩れている)人が多く、その人がたまたま尿酸値が高くなるとそこに痛風発作が起きているのではないか、とも言われています。
なので、予防のために、普段から足のアーチを整えることもおすすめです。
3. 強剛母趾
(きょうごうぼし)
見た目はなんともないけど、歩くと痛いのが特徴。
特に、親指を反らせると痛みが強いです。
症状・痛み方
あまり聞かない病名ですが、外反母趾、痛風に続いて3番目に親指の付け根に多い病気です。
赤みや腫れがないけど、親指の付け根の関節を少し動かしただけで痛いです。
特に親指を上に反らす時に痛いので、歩くと痛いです。ひどくなると、立っていることも痛いという人もいます。
親指が多少「く」の字に変形している場合もありますが、変形はわずかで外反母趾ほど曲がっていません。
また、親指の足裏人差し指側にタコが出来ていることが多いです。
自分では気付きにくいかもしれませんが、強剛母趾になっている人は痛い親指をかまうので、ガニ股でベタベタと歩くのも特徴です。
原因
強剛母趾になる原因は、先ほど説明した外反母趾と同じです。
つまり、足底の筋力の低下などで、足のアーチが崩れ、歩くときに親指にかかる力の逃げ場がなくなって起こります。
この時に、負荷に耐え切れなくなった親指の関節が外側へ逃げていくのが「外反母趾」です。
これに対して、親指の関節が外側へ逃げることができず、関節そのものが崩れてしまうのが「強剛母趾」です。
つまり、「強剛母趾」は、関節の中にエネルギーが溜まっていくだけなので、外反母趾のような激しい変形は起こりません。
でも、関節の中で常に関節と関節が衝突事故を起こしている状態なので、内部で炎症が繰り返され、最終的に関節そのものが破壊されてしまいます。こうなると、親指を反り返せなくなります。
具体的には、関節がズレてしまったり、
関節にトゲのような形をした骨が出来てしまったり、
関節の骨同士がくっついてしまったりします。
治し方
整形外科に行きます。
それほどひどくなければ、足の甲を持ち上げて足の横の広がりを矯正するインソールで進行を抑えます。
関節で炎症を起こしていれば、シップを貼ったり、関節にステロイド注射をして痛みを取ります。
症状がひどい場合は、骨を調整する手術をします。
これまでは、関節を動かすと痛いので、親指の関節が動かないように関節を完全に固定する手術がよく行われていました。
でもこの方法では、痛みはなくなっても、その部分が全く動かないので、歩くときに別の場所に負担がかかってそこに痛みが移動するだけです。
そのため、関節を固定せず、骨を切って正しい形につなぎなおす方法(関節は固定せずに残す)が良いとされてきています。
ちなみに、本当は強剛母趾なのに、その時たまたま尿酸値が微妙に高いというだけで「痛風」と誤診断されて、痛風の内服薬を飲み続けてしまうケースもあります。
その次によくある原因
足の親指の付け根が痛い場合、ここまでで紹介した「外反母趾」「痛風」「強剛母趾」の可能性が高いです。
でも、それ以外にもしばしば起きるものがあるので紹介します。
4. 種子骨炎
(しゅしこつえん)
症状・原因
種子骨炎は、親指の付け根の肉球のあたりを押すと痛いです。
この肉球のあたりが赤く腫れて痛みます。
種子骨は、親指の付け根の骨の裏側にある、種のような小さな2つの骨です。
この種子骨に負担がかかると、骨自体やその周りに炎症が起きて、痛みます。
つま先立ちをしたり踏み込む動きの多い、バレエ、ダンス、テニス、陸上選手、バスケットボール選手など、スポーツをしている10~20代の若い人に多いです。
激しいスポーツをしていなくても、親指の裏側に負担がかかりやすい足の形をしているとなることがあります。
種子骨は体の中で一番下にある骨で、さらに、歩く時や走る時は片足のつま先で全体重を支えるので、いろいろな障害が起きやすいです。
例えば、
- ・種子骨が割れる
- ・種子骨に炎症が起きる
- ・種子骨の壊死
- ・種子骨周辺の液体が炎症を起こす
- ・種子骨周辺の腱が炎症を起こす
などです。これらをひっくるめて種子骨炎と呼びます。
種子骨炎の初期は、踏み込むときに痛みを感じるだけですが、ひどくなると安静にしていてもズキズキ痛み、歩けなくなることもあります。
治し方
整形外科に行き、レントゲンを撮って、種子骨炎が割れているのか壊死しているのかなどを診断してもらいます。
まず、痛みを抑えるために、ステロイド注射をしたり、安静、冷却をするのが基本治療です。
痛みを抑えたら、種子骨に負担がかかる原因を解明して、その原因に応じたインソールで対応することが多いです。
具体的には、足の甲を持ち上げて足のアーチをサポートするインソール(足の裏全体に体重を分散できる)や、種子骨部分をくり抜いたサポーターなどです。
また、種子骨が血行障害で壊死している種子骨炎の場合は、手術で種子骨を摘出すると痛みが軽減することがあります。
でも、そもそも負担が大きくかかる部分だからこそ、腱を保護して運動効果を高める種子骨が存在しているので、安易に摘出しない方が良いです。
5. 関節リウマチ
女性に多い病気です。
初めは足のむくみ・こわばりがあり、その後腫れて痛みも出ます。
左右対称の関節(両足)に起きるという特徴もあります。
症状・痛み方
関節リウマチは足だけでなく全身性の病気です。
そのため、体のあちこちの関節に起きる可能性がありますが、足では特に、親指の付け根が一番多いです。
最初は1つの関節から起こることもありますが、ほとんどは、3つ以上の関節が腫れたり痛んだりします。
痛くなる可能性のある足の関節は下図です。
左右対称の関節に起きるという特徴もあります。
圧倒的に女性に多い病気で、患者の8割が女性です。
男女ともに、30~50代の発症が多いですが、15歳以下や60歳以上で発症することもあります。
初期症状は、朝目が覚めたときに、足がなんとなくむくんでこわばっていて、動かしにくい状態が短時間つづきます。この症状ほぼ毎日続いて起こります。
次は、足の指から足の甲の真ん中あたりの関節まで痛みが広がり、動かさなくても痛んできます。さらに、関節が腫れてきます。
最初は痛みがそれほどでもない場合が多いですが、早期治療が非常に大事な病気です。関節リウマチの可能性がある人は早く病院に行ってください。
長い期間進行すると、関節が変形してしまいます。親指は外反母趾のように「く」の字に変形してしまいます。
原因
関節リウマチとは、本来は体に異物が入ると攻撃する「免疫作用」に異常が起きて、間違って自分自身の体を攻撃してしまい、骨が破壊され関節が変形してしまう病気です。
その原因は、遺伝・細菌やウイルス感染・環境などが考えられていますが、現時点で明確な原因が分かっていません。
治し方
診断には専門的な知識が必要です。X線や血液検査を行います。
また、血液検査だけでは診断できず、専門家でも最初は関節リウマチの診断に迷う時がありますが、血液検査の新しい項目も保健適応になり、診断の精度は上がってきています。
関節リウマチは、内科と整形外科の両方に専門家がいますが、どちらも大きな違いはありません。
治療方法は薬が基本です。使う薬の種類は以下の4種類です。
- ・消炎鎮痛剤…一時的に痛みを止めるだけで根本的治療ではない。
- ・ステロイド…こちらも痛みを止めるが、根本的治療ではない。
- ・抗リウマチ剤…免疫を調整する薬。進行を遅らせる。
- ・生物学的製剤…関節の破壊を止める。今一番リウマチに効果のある薬。
適切な靴や装具を装着して、正しい位置で骨と骨をくっつけることも重要な治療として行われています。正しい位置でくっつくと、痛みも無くなり安定化して、装置も不要になります。
場合によっては手術をすることもあります。変形した骨を切り取って調整・固定する手術などいくつか方法があります。
6. 足趾の末梢神経痛
(そくしのまっしょうしんけいつう)
親指に違和感・しびれが出ます。
痛みはある場合もない場合もあります。
症状・原因
親指を通っている末梢神経が、靴などで圧迫されて親指の指先~付け根辺りにしびれや痛みが出ます。
症状としては、しびれ、痛み、にぶい、ピリピリ痛む、冷たい、熱い、違和感、ざらざらしてる感じなど、人それぞれです。
初期のころは、違和感だけを感じ、悪化するにつれて痛みやしびれが強くなる場合が多いです。
普通、神経は圧迫で麻痺が起こらないように、筋肉の中を通っています。
でも、足の指には筋肉が無いので、簡単に麻痺が起こりやすいです。
特に、親指の付け根は少し外側に飛び出している人が多いので、靴などで圧迫されやすいです。
切り傷、打撲、捻挫、高熱、低温なども末梢神経麻痺の原因になります。
治し方
末梢神経は再生可能な組織で、自然回復する場合が多く、あまり深刻な問題ではありません。
(状態によっては、回復不可のこともあります。)
神経を圧迫している原因(合わない靴や、外反母趾など)が分かれば、それを止めます。
それと同時に、神経を修復させる効果のあるビタミンB12を飲みます。痛みやしびれが強い場合は、神経の痛み・しびれに特化した鎮痛剤(リリカ)が処方されることが多いです。
神経が切断されている場合は、神経修復の手術をします。
7. 親指の甲の腱を痛めている(足趾伸筋腱炎)
(そくししんきんけんえん)
親指から甲になぞっていく線上のどこかに痛みを感じます。
スポーツをしていなくても老若男女だれもがなる可能性があります。
症状・原因
足趾伸筋腱炎は、よく起きます。
足の甲は、足にかかる重さや衝撃をやわらげるためにアーチ状になっています。
実際に、親指から甲の中央になぞっていくと、少し飛び出している部分があります。ここはアーチのために少し角度がついているので、関節の端と端が誰でも少し角張っています。
そして、この角張っている所の上に、親指の「腱(けん)」が通っています。
(腱とは、骨と筋肉をつなぐ細長いスジのようなものです。)
靴がこの部分を圧迫する形でできているので、腱が炎症を起こして痛みます。
さらに、加齢によって自然とこの関節がさらに飛び出してくることがあり、さらに圧迫されて痛みます。
また、ハイヒールの履きすぎで足が「ハイアーチ型」になっている人も圧迫されやすく、痛みやすいです。
同じことが足の指全部に起こる可能性があるので、下図の青線上が痛む可能性もありますが、親指が一番多いです。
治し方
シップやクリームで様子を見たり、甲を圧迫しない靴にします。
きつすぎる靴はもちろんですが、ゆるすぎる靴も足が靴の中で動きすぎて腱が炎症を起こすこともあるので、ちょうどいい靴を選ぶことが大事です。
骨の変形などで飛び出しが強い場合は、手術で飛び出した部分を削ることもあります。
再発防止方法
甲を圧迫しないサイズのあった靴を選ぶ。
もしかしたらこの可能性も
発生頻度が低い「まれ」なものや、魚の目など見てすぐに原因が分かるものなど、ちょっと違うかもしれないけど可能性が少しでもあるものを載せておきます。
これまで紹介した原因にピンと来なかった人は見てみてください。
8. 足の親指の疲労骨折
過度のスポーツや仕事によって、目に見える傷がないのに痛む場合はこれを疑います。
「疲労骨折」とは、繰り返し同じ動きをして骨がもろくなり骨折することを言います。
同じ場所に小さな力が繰り返し加わり、その集積として骨折してしまいます。
疲労骨折は全身のいろいろな骨に起こります。
例えば、長引く咳で肋骨(ろっこつ)が疲労骨折したり、スポーツの練習のしすぎで足の甲の骨が疲労骨折することがあります。
足の親指が疲労骨折することは「まれ」のようですが、医療文献に「母趾基節骨(足の親指の付け根の骨)は比較的治癒が得られにくく手術適応となりやすい」との記載があることから、足親指付け根にも起こることが分かります。
9. 腓骨神経麻痺
(ひこつしんけいまひ)
図の赤い部分ににしびれ・痛みが起きます。
症状は、しびれ、痛み、にぶい、違和感、触るとピリピリする、冷たい、熱い、など感じ方は人それぞれです。
これは、ふくらはぎに「腓骨神経」という神経が通っていて、ここには筋肉がなく、外からの圧迫でこの神経が骨と骨の間にはさまれて、マヒが起きるものです。
その「腓骨神経」は何本かに分かれているので、はさまれた神経によって、上図のようにしびれや痛む範囲が変わります。
「浅腓骨神経」と「深腓骨神経」が同時に障害を起こすことはまれなので、親指の付け根だけがしびれて痛い場合は、「深腓骨神経」の方が可能性が高いでしょう。
長時間足を組んでいたり、太ももから下にギブスをつけているときなどに起こります。これらの原因を早く取り除くことが治療になります。
10. 魚の目
地面に足をつける時にとげが刺さったように痛むのが特徴です。
魚の目が出来ていたら見てすぐに分かります。
足に変形があったり、合わない靴を履いていると同じ所が圧迫されて、皮膚の防御反応によって、皮膚が増殖します。
その皮膚の増殖が、皮膚の内側に向かって起こり、トゲのような芯ができてしまうのが魚の目です。
このトゲのように尖った芯が神経のある層まで達すると、歩くと飛び上がるほど痛いです。
芯が深い場合は、皮膚科で芯を取ってもらいます。軽い場合は、市販の薬で芯を取ることも出来ます。
でも、一時的に魚の目を直しても、親指のあたりに魚の目が出来る人は足の横アーチが潰れてしまった「開張足」になっている場合が多いので、その「開張足」を直さないと何度も魚の目が再発します。
11. ガングリオン
赤みのないプクっとした腫れが出るのが特徴です。
体中のどこの関節にでもできる可能性がありますが、手足の関節に出来ることが多いです。
どちらかといえば手に出来ることが多いですが、足の親指の関節に出来ることもあります。
関節を覆っている関節膜には、どろどろとした液体で満たされていますが、関節膜の中は圧力が高いので、たまに、膜の弱い部分が焼き餅のようにプクっと飛び出してしまうことがあります。これがガングリオンです。
ガングリオン自体には、痛みは無いですが、神経の近くにできて、神経を圧迫するとしびれや痛みがでます。
親指に出来ると靴が当たって痛いという人もいます。
病院で注射針をガングリオンに刺して溜まった液を吸い出してもらうと治りますが、これだけだと再発する人が多いです。
再発してしまったら、また液を吸い出し、代わりにステロイド剤を注入すると、袋の内側と内側がくっついて消えることが多いです。
それでも再発するなら、ガングリオンを切除してその部分がまた膨らまないように関節膜を糸で補強する手術をします。
痛いのが人差し指かもしれない場合は
ここまでで考えられる原因を11個紹介しました。
それでも、自分にマッチする原因が見つからない人のために、親指ではなく「人差し指」の付け根あたりが痛む病気を念のためリストアップしました↓
もしかすると親指の付け根ではなく、人差し指の付け根が痛んでいるかもしれません。
それぞれ外部のサイトへリンクを貼っているので、確認してみてください。
何科に行けばいい?
足の親指の付け根が痛い場合、基本的に「整形外科」に行きます。
整形外科は、『首から下』の『骨・関節・筋肉・神経』などを扱う科です。
なので、足の痛みやしびれ、動きの悪さ、骨折、脱臼、捻挫などは整形外科の専門です。
例外として、本ページで紹介した痛風と関節リウマチのような内科系の病気の場合は、内科と整形外科の両方の科で協力して治療したり、内科の専門科に任せる場合があります。
痛風・関節リウマチの疑いがある人は、整形外科・内科のどちらに行くか迷う所です。まず整形外科に行き、その他の原因の可能性がないか見てもらい、もし痛風・関節リウマチと診断されたら、その医師の指示に従って内科に行くと良いでしょう。
痛風・関節リウマチの可能性がかなり高い場合は、初めから内科に行って良いでしょう。
まとめ
女性なら外反母趾を、男性なら痛風をまず疑う!
意外と強剛母趾も多い。
- ・外反母趾
…女性に多く、親指の関節が「く」の字に曲がっている。 - ・痛風
…中年男性に多く、突然夜間に赤く腫れる。触れないほどの激痛。 - ・強剛母趾
…変形や腫れは無いけど、親指を動かすと痛い。特に親指を反り返る時に痛い。 - ・種子骨炎
…親指の肉球あたりが腫れて痛い。スポーツをしている10代~20代に多い。 - ・関節リウマチ
…両足にむくみ・こわばり・腫れ・痛みがある。進行していると外反母趾のような変形がある。30~50代の女性に多い。 - ・足趾の末梢神経痛
…違和感・しびれ・痛みがある。見た目はなんともない。 - ・親指の甲の腱を痛めている
…親指の付け根から甲になぞっていく線上が痛い。スポーツをしていなくても誰でもなる。まぁまぁ良くある原因です。 - ・親指の疲労骨折
…目に見える傷はない。過度のスポーツや仕事をした人に起きる。 - ・腓骨神経麻痺
…違和感・しびれ・痛みがある。見た目はなんともない。 - ・魚の目
…足裏の親指の付け根に魚の目ができているので見れば分かる。歩いたり魚の目が出来てる所を押すと痛い。 - ・ガングリオン
…赤みのないプクっとした腫れがある。
参考文献
高井 信朗(2014)『全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患』成美堂出版
桑原 靖(2016)『放っておくと怖い「足の痛みと不調」を治す本』宝島社
宇佐美則夫(2014)『足の痛みを正しくとる』メディカルトリビューン
高倉義典(2016)『名医が教える 足のお悩み完全解決バイブル』誠文堂新光社
井尻 慎一郎(2014)『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』創元社
日経ヘルス(2014)『足と脚の悩みを解決』日経BP社
高山かおる(2013)『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』家の光協会
主婦の友社(2010)『家庭の医学』主婦の友社
坂口 顕(2013)『理学療法士のための足と靴のみかた』文光堂
井尻 慎一郎(2017)『知りたいことがよく分かる 整形外科Q&Aハンドブック』創元社
日経ヘルス(2015)『忙しい女性のための 足の悩みまるごと解決バイブル』日経BP社
桑原 靖(2017)『日常診療でよく出会う足病変の診かた』中外医学社
プレゼントなび